2007年05月21日
ダ・ビンチ興行 上野風
昔、自分らの田舎では、お祭りや縁日になると、境内にいろんな出店が出たものでした。
そこで売られているものは、いずれも近所のお店では絶対に見かけないもの、ウルトラマンのビニール袋に入った綿菓子や真っ赤なリンゴ飴、怪しいタコ風船などだったのですが、さらに出店の中には、日常から隔絶した「見世物」もありました。
怪しいおじさんが、本当にしょうもない、小細工としか言いようのないような手品の小道具を実演販売するのですが、するとたいがいはダミ声で「ハイハイ、御用とお急ぎでない方は見ておいで」などと口上を始めると、自分の前に線を引きながら「ハイハイ、にいちゃん、この線から前に出てはいけないよ」などと距離をとって、「いいかい、一度しか見せないから、よーっく見なよ。」などと勿体をつけながら、手品を始めるのでした。
縁日には独特の上気した雰囲気があるので、その場で子供達はすっかりおじさんの手品に騙されてしまい、ついさっき母親にねだってやっと貰ったばかりの小遣いから、つい小銭をつまみ出して、うっかりその小道具を買ってしまうのでした。しかし、いざ手に入れてみれば、それはイカにもおじさんの手作りの本当にしょうもない仕組みの手品道具で、さらにはたくさんの子供が買うので、翌日には学校でも使えないという代物なのでした。
また、もっと大きな、これは櫓を組んで作ったような見世物小屋も出て、たとえばそこでは入り口にダミ声のオヤジが出て、たいがいは「親の因果が子に祟り…」などという口上をエンドレスでやっていて、仕切られた小屋の中には、金魚を飲み込んで吐き出す「人間ポンプ男」だの、いかにも作り物の首をつけた「ロクロ首女」だの、「恐怖、牛女」だのの前を見物しながら歩いて行くのでした。
こうしてこの出店のおじさんたちが稼いだお金は、多分その晩の小料理屋の飲み代にしかならなかったのですが、こうしたおじさんたちをじつは香具師と呼ぶのでした。
そこで売られているものは、いずれも近所のお店では絶対に見かけないもの、ウルトラマンのビニール袋に入った綿菓子や真っ赤なリンゴ飴、怪しいタコ風船などだったのですが、さらに出店の中には、日常から隔絶した「見世物」もありました。
怪しいおじさんが、本当にしょうもない、小細工としか言いようのないような手品の小道具を実演販売するのですが、するとたいがいはダミ声で「ハイハイ、御用とお急ぎでない方は見ておいで」などと口上を始めると、自分の前に線を引きながら「ハイハイ、にいちゃん、この線から前に出てはいけないよ」などと距離をとって、「いいかい、一度しか見せないから、よーっく見なよ。」などと勿体をつけながら、手品を始めるのでした。
縁日には独特の上気した雰囲気があるので、その場で子供達はすっかりおじさんの手品に騙されてしまい、ついさっき母親にねだってやっと貰ったばかりの小遣いから、つい小銭をつまみ出して、うっかりその小道具を買ってしまうのでした。しかし、いざ手に入れてみれば、それはイカにもおじさんの手作りの本当にしょうもない仕組みの手品道具で、さらにはたくさんの子供が買うので、翌日には学校でも使えないという代物なのでした。
また、もっと大きな、これは櫓を組んで作ったような見世物小屋も出て、たとえばそこでは入り口にダミ声のオヤジが出て、たいがいは「親の因果が子に祟り…」などという口上をエンドレスでやっていて、仕切られた小屋の中には、金魚を飲み込んで吐き出す「人間ポンプ男」だの、いかにも作り物の首をつけた「ロクロ首女」だの、「恐怖、牛女」だのの前を見物しながら歩いて行くのでした。
こうしてこの出店のおじさんたちが稼いだお金は、多分その晩の小料理屋の飲み代にしかならなかったのですが、こうしたおじさんたちをじつは香具師と呼ぶのでした。
さて、上野の「ダビンチ展」の入場者が50万人を超えたとのコトでした。
フィレンツェのウフィツィ美術館のダビンチの「受胎告知」が初めて海外展示されるというこの企画、いやいやおめでたいことです。

というわけで、自分も行ってきたのですよ。
会場は、伝統と格式ある上野の国立博物館。
中央の日本館をほぼ「受胎告知」の展示だけに転用しています。
日曜日の上野はかなりの人出で、すでに正門のチケット売り場で「現在の待ち時間は20分です。」と告げられました。
構内に入ると、入場制限は展示会場の入り口で行われており、建物の前にはすでに画像のように長蛇の列。しかし、20分弱で入場できました。
展示場はやたら暗くなっていて、入り口からスロープ上に低くなった正面に「受胎告知」がうっすらとライトアップされています。
しかし、実は絵の前では、絵と平行に、ちょうどパンダ舎の前のように通路が仕切られており、観客はまず手前の通路を左から右に移動しながら絵を見て、そしてつづら折に絵の直前の通路を右から左に進むわけです。当然ながら入場制限で待たされていた観客がなだれ込んでくるわけで、これがかなりの人数なのですが、すると会場整理員、スーツを着てアメリカの真似をしてネームプレートなんか下げているのですが、これがなんと「立ち止まらずにご覧ください、立ち止まらないで下さい。」などと連呼するのです。つまりは、この2列の通路を往復する時間しか絵の鑑賞はできない。宣伝文句には「ダビンチ初期の傑作」とあるのに、せっかくのその名画に向かって、立ち止まって「うーむ」などということすら決して許されないのです。そして、回転寿司のように観客が流れ去っていくと、次の一団がどかどかと入ってくるわけです。
もちろん展覧会ですから、当日であれば何回「受胎告知」をみても、それはかまわないはずです。
そこで、展示室の出口にいた整理員のネエちゃんに聞いてみたのです。
「もう一度展示室に入って絵を見てもいいのですよね?」
当然ながら、出口からもう一度あからさまに入り口に入っていく人たちもたくさんいたのですが、そのネエちゃんが言った信じられない言葉とは…!
「はい、再入場も問題ありませんが、もう一度列の最後尾にお回りいただきます。」
ばかやろう!
そもそも1500円の入場料がどんなに非常識に高いのか分かっていない。ルーブルでもバチカンでも、もっと安い料金を一度払えば、大量の国際的にも超一流の作品を、好きなだけ何度でもみられる!なんならジョコンドの正面に1時間陣取っても、(ほかの客に迷惑がられるけど)誰からも文句は言われない。
なぜなら、それは見世物ではなく美術品、観客が自分の感性で納得のいくまで「鑑賞」することを目的として展示されているんじゃいっ!
(註:ちなみにルーブルの入場料は7.50ユーロ:時価1200円で、夜中の7時過ぎまで、どこでどの作品を何回みても構いません。)
それを、珍しいからって1500円もとって、見物はベルトコンベアーのように歩かせたままで、総鑑賞時間数分間?再入場にまた20分並べだと??
日本の筆頭美術館として恥ずかしくないのだろうか、「受胎告知」を「見世物」まがいに扱ってしまうような意識で、パンダやモナリザの時代から全く進歩していない。
これでは香具師の興行とかわらん!
「ハイハイ、珍しいから見ていきな、この線から入ってはいけないよ、立ち止まってはだめだ、一度しか見れないからよーっく見るんだよ、おっと料金は先払いだから、ちょっと高いけどそこに並んでおくれ…」
フィレンツェのウフィツィ美術館のダビンチの「受胎告知」が初めて海外展示されるというこの企画、いやいやおめでたいことです。
というわけで、自分も行ってきたのですよ。
会場は、伝統と格式ある上野の国立博物館。
中央の日本館をほぼ「受胎告知」の展示だけに転用しています。
日曜日の上野はかなりの人出で、すでに正門のチケット売り場で「現在の待ち時間は20分です。」と告げられました。
構内に入ると、入場制限は展示会場の入り口で行われており、建物の前にはすでに画像のように長蛇の列。しかし、20分弱で入場できました。
展示場はやたら暗くなっていて、入り口からスロープ上に低くなった正面に「受胎告知」がうっすらとライトアップされています。
しかし、実は絵の前では、絵と平行に、ちょうどパンダ舎の前のように通路が仕切られており、観客はまず手前の通路を左から右に移動しながら絵を見て、そしてつづら折に絵の直前の通路を右から左に進むわけです。当然ながら入場制限で待たされていた観客がなだれ込んでくるわけで、これがかなりの人数なのですが、すると会場整理員、スーツを着てアメリカの真似をしてネームプレートなんか下げているのですが、これがなんと「立ち止まらずにご覧ください、立ち止まらないで下さい。」などと連呼するのです。つまりは、この2列の通路を往復する時間しか絵の鑑賞はできない。宣伝文句には「ダビンチ初期の傑作」とあるのに、せっかくのその名画に向かって、立ち止まって「うーむ」などということすら決して許されないのです。そして、回転寿司のように観客が流れ去っていくと、次の一団がどかどかと入ってくるわけです。
もちろん展覧会ですから、当日であれば何回「受胎告知」をみても、それはかまわないはずです。
そこで、展示室の出口にいた整理員のネエちゃんに聞いてみたのです。
「もう一度展示室に入って絵を見てもいいのですよね?」
当然ながら、出口からもう一度あからさまに入り口に入っていく人たちもたくさんいたのですが、そのネエちゃんが言った信じられない言葉とは…!
「はい、再入場も問題ありませんが、もう一度列の最後尾にお回りいただきます。」
ばかやろう!
そもそも1500円の入場料がどんなに非常識に高いのか分かっていない。ルーブルでもバチカンでも、もっと安い料金を一度払えば、大量の国際的にも超一流の作品を、好きなだけ何度でもみられる!なんならジョコンドの正面に1時間陣取っても、(ほかの客に迷惑がられるけど)誰からも文句は言われない。
なぜなら、それは見世物ではなく美術品、観客が自分の感性で納得のいくまで「鑑賞」することを目的として展示されているんじゃいっ!
(註:ちなみにルーブルの入場料は7.50ユーロ:時価1200円で、夜中の7時過ぎまで、どこでどの作品を何回みても構いません。)
それを、珍しいからって1500円もとって、見物はベルトコンベアーのように歩かせたままで、総鑑賞時間数分間?再入場にまた20分並べだと??
日本の筆頭美術館として恥ずかしくないのだろうか、「受胎告知」を「見世物」まがいに扱ってしまうような意識で、パンダやモナリザの時代から全く進歩していない。
これでは香具師の興行とかわらん!
「ハイハイ、珍しいから見ていきな、この線から入ってはいけないよ、立ち止まってはだめだ、一度しか見れないからよーっく見るんだよ、おっと料金は先払いだから、ちょっと高いけどそこに並んでおくれ…」
Posted by mouf at 23:24│Comments(2)
この記事へのコメント
マジっすか!
そんなの耐えられませんね・・・。絵画って、近づいたり離れたりして見て噛みしめるもんだと思っていましたが、そんなこともできないなんて・・・。しかも、国立博物館で!お里が知れるというかなんというか・・・。
しかし、ルーブルのHPは日本語表記もあるし、拡大も出来るとは知りませんでした。楽しい!これからいろいろHP内を散策してみようと思います。
まぁまぁ、moufさんも、ウチのブログにご用意してる指揮棒頭に刺したおっさんの粋な歌でも聞いて、和んでください。
そんなの耐えられませんね・・・。絵画って、近づいたり離れたりして見て噛みしめるもんだと思っていましたが、そんなこともできないなんて・・・。しかも、国立博物館で!お里が知れるというかなんというか・・・。
しかし、ルーブルのHPは日本語表記もあるし、拡大も出来るとは知りませんでした。楽しい!これからいろいろHP内を散策してみようと思います。
まぁまぁ、moufさんも、ウチのブログにご用意してる指揮棒頭に刺したおっさんの粋な歌でも聞いて、和んでください。
Posted by uramaya at 2007年05月23日 12:59
いやいや、和んでいないわけではないのです。
このツケは、今度千葉の動物園で「風太君ファミリー」でも見て挽回するしかないと決意したばかりですから。
でもね、やっぱり一番トホホなのは、こんなふざけた扱いを受けていながらも、黙って1500円払って文句も言えない日本人なのではないかと痛感するのです。
何度も感じることですが、この国の人達の無自覚な従順さは、まるで奴隷のレベルです。
あ、そうそう、せっかくですので、これも是非見てくださいね。
http://www.louvre.fr/llv/oeuvres/detail_notice.jsp?CONTENT%3C%3Ecnt_id=10134198673237929&CURRENT_LLV_NOTICE%3C%3Ecnt_id=10134198673237929&FOLDER%3C%3Efolder_id=9852723696500816&fromDept=false&baseIndex=42&bmUID=1179924981833#
このツケは、今度千葉の動物園で「風太君ファミリー」でも見て挽回するしかないと決意したばかりですから。
でもね、やっぱり一番トホホなのは、こんなふざけた扱いを受けていながらも、黙って1500円払って文句も言えない日本人なのではないかと痛感するのです。
何度も感じることですが、この国の人達の無自覚な従順さは、まるで奴隷のレベルです。
あ、そうそう、せっかくですので、これも是非見てくださいね。
http://www.louvre.fr/llv/oeuvres/detail_notice.jsp?CONTENT%3C%3Ecnt_id=10134198673237929&CURRENT_LLV_NOTICE%3C%3Ecnt_id=10134198673237929&FOLDER%3C%3Efolder_id=9852723696500816&fromDept=false&baseIndex=42&bmUID=1179924981833#
Posted by 毛布 at 2007年05月23日 21:58