2005年11月02日

滞在許可証(2)

こちらでは、昨日は万生節(ハローウイン)のため、休日でした。

さて、10月31日はといえば…
そう、月に一度しか行われないという滞在許可証の申請日だったのでした。
前回の空振り出頭の際に、「朝7時に警察署に来るように!」との指示を受けていたので、なんと朝5時に起床し、6時には自宅を出発。バスを2本も乗り継いで、はるばる市街地のはずれまで行ってまいりました!

さて、前回のコメントで、「朝7時なんて早い時間を指示するのは、早めに申請者に出揃ってもらって、お昼休みまで仕事を持ち越さないため」などとたいへん申し訳ない邪推をしてしまったのですが、これは全くの間違いでした。
7時には既に警察署は開いていて、担当職員はてきぱき事務手続きを捌いていたのです!

ところが!
自分が警察署に着いたのは7時5分だったのですが、そこにはすでに大量の申請者がいるじゃあないですか!(そりゃそうですよねぇ、なにせ月に1回ですから。)

さらに、しばらく窓口を見ていると、手続きをしている人たちは、自分の名前を呼ばれてから中に呼び込まれている??と、いうことは、申請書類を渡す前に、自分の名前を予め職員に通知しているはずだということです。
ありゃりゃ!あわてて建物の中を見渡すと、入り口のかたわらに一ヶ所だけ人だかりしている場所があって、みんなでなにやら白い紙とボールペンを奪い合っている。おそらくこれが申請のための順番待ちの記入用紙で、紙は所定の場所からあちこちに持ち去られてしまっているようです。当然ながら、順番に並ぶ、などというゲルマン系の発想なんかまるでなくて、まるでパンのかけらを争うハトのように、人垣を押しのけ、近くの人間を牽制しながら紙とペンを奪い合うという、およそ公的機関の窓口とは思えないおぞましく無秩序な光景が!(うげげ、制御しろよ!)
そこで、スッタモンダしながらもやっとその紙とペンを入手して、自分の名前を書き入れたときには…
な、なんと自分の順番はすでに291番?!
うわわ、朝7時に来ても既に300人待ちなのかよ…(申請日増やせよ!)
そこでふと頭をよぎったのは、事前にネットで検索した情報では、警察署によっては申請者が40人くらいの段階でその日の申請を打ち切ってしまうような窓口もあるとのこと。
ん、ってーことは… もうアウトじゃん!!
これは、またまた朝5時に起きて出直して来なきゃならないのか…??

などという不安にさいなまれ始めたところ、さすがに警察署の中が無秩序に騒がしいのはまずい、と判断されたのか、申請者は全員建物から追い出され、警察の中庭で申請者登録をすることになったのでした。
広場の一段高いところに警察の職員が2人。記入された順番用紙を読み上げながら申請者のパスポートを確認するという手続きで、それを申請者が黒山になって取り囲んでいる、という光景になったのですが…建物にすら入れてもらえないなんて、おそらくこの光景はドヤ街で日雇い労働者を集めるのと同じような感覚なんですね…

さて、気を取り直して周囲を見渡してみたのですが、申請者は意外とヨーロッパ系の人が多く、みなさんきちんとイタリア語を話すのですが、この方々はルーマニアのパスポートを持っている人が多いようでした。また、ここでもやはり中国系の人が多く、10人くらいは見かけたでしょうか。日本人がいたら情報交換しようとも思っていたのですが、なぜか日本人は自分ひとりしかいませんでした…

さて、自分のパスポート確認までなんとか無事に受理してもらい、しみじみと安堵したのが9時近く。ところがこの直後、300人の段階で担当職員が登録を打ち切ってしまったため、残った人たちからはさかんにブーイングが出てました。(そりゃそうですよ、7時15分ぐらいに来て、2時間も待ったのに、結局来月また出直して来るんじゃねぇ…)

さて、この段階で処理されたのはパスポートの確認までで、その他の登録書類は受理されていないはずなのですが、奇妙なことになぜかみんなどんどんと帰宅していきます。
これでは申請にならないはずなので、担当職員に事情を聞かなければならないのですが、ふたたび建物に入ると、担当窓口は、登録を打ち切られてしまった人達や遅れて出頭して申請できなかった人達で、またもや黒山の人だかりで騒々しくなっています。
やっと窓口職員とお話できる順番が来たので、さっそく「今日持ってきた必要書類なのだが、これはいつ提出するのか?」と尋ねてみたところ…

「今日は申請のための(予備)登録をしただけなので、12月2日に再度出頭してそこで必要書類を提出するんです。」との説明(??)

へ? って、また1ヶ月待ちなんですか?
をいおい、申請の予備登録とやらが月1回しかないのに、そこから正式登録までにさらにもう1ヶ月待ち??

ということで、結果的にこの日の処理は首尾よく進んだはずなのですが、いくらうまくいっても申請にこぎつけるだけでもモトモト2ヶ月必要だったという、なんとも脱力せざるを得ない展開が待っていたのでした…

しかし…
この国では、外国人は入国後8日以内に滞在許可証の申請を行わないと違法らしいのです。それなのに、担当機関の事務処理が、違法もクソも考慮せずに構造的に2ヶ月待ちってのは、これはいったい何なのでしょう?

もちろん、自分は市街地からかなり離れた郊外の職場の周辺に部屋を借りたため、この地域ではローマの市街地とは住民層がかなり異なっている可能性があります。このため、企業の駐在職員や留学生として入国する外国人よりは、個人経営レベルの会社・商店の招聘状でVISAを取って入国する、いわば移民の人達たちがほとんどで、その数も多いでしょう。ですから、今回の対応がローマ市全体の方針だとは考えにくく、移民の割合が高い地域における対応を見ているのだと思います。

しかし、自分はこの国に流れ込んで来て本国に送金しようなどというような移民ではなく、さらに滞在許可証の申請を済ませるまでは健康保険にも加入できないのですが、なぜ自分までこのような失礼で効率の悪い対応を受けて、そのもたらす不利益(リスク、といってもこの国では通じそうにない…)を被らなければならないのでしょうか??困ったものです。

とはいえ…
じつは職員の方々はきちんと決められた処理をてきぱきと捌いており、申請者からの不平にもユーモアを交えて対応するなど、某国のようななまるでやる気のない、感じの悪い対応ではありませんでした。(このあたりの「感じが悪くない」というあたりがこの国に対する基本的な信頼感が損なわれないために大切な要素なのだと思います。)

さて前回、警察署の裏はのどかな牧草地帯だったと書いたのですが、帰り際に軽度の脱力感を抱きながら、あらたに周囲を確認してみることにいたしました。
すると、じつはそこにはこのような光景があったのでした。

滞在許可証(2)
広大な牧草地帯の向うには、ローマ時代の遺跡が…
近くにいたおじさんによると、これはガリア人の侵入を防ぐための防壁(3世紀か?)だったとか…

滞在許可証(2)

ああ、畏るべしローマ。
(この国では、2ヶ月なんて期間は、ほとんどどうでもいいレベルなのかもしれない。)



Posted by mouf at 09:16│Comments(2)
この記事へのコメント
こんばんは。uramayaです。

うぁ~、お疲れ様でした。読み入ってしまいました。

果たして、ここまで待たされると、、、きっと私なら状況に負けて、
「効率が悪い」ってことが一体どういうことなのか、
自問自答してしまいそう、、、なくらいに大変そうですね。

紙とペンを奪い合うとか、言葉の違う人たちの黒山の人だかりとか
んもぅ、ちょっとゾクゾクするような光景ですね。日本じゃ絶対にありえない・・・。
不謹慎ながら、羨ましい話です。

それに、最後の写真もなんとなくカタルシス・・・。

ぜひぜひ、一ヵ月後の経過も聞かせてくださいね♪
Posted by uramaya at 2005年11月03日 00:12
いやいや、あちこち検索してみると、ウチの場合が一番手ごわいようで、ほかはもっとスムーズらしいですよ。

ところで、今日の夕方なんですけどね...

気取った某他国のNTTみたいな施設からメールが来たんですよ。

見ると、「メールサーバーのエラーで、あなたの電話回線契約解除の受理ができていませんでした。つきましては、24時間以内にご連絡をいただかないと、今回いただいた通知自体をなかったことにさせていただきます。」
って書いてあるんですぜ。

そもそも、1ヶ月前のエラーをなんで今までほっといたんだ?
とか、
NTTのように国内のインフラを整備しているような施設なのに、そのメールサーバーがバックアップもなくイカれて、ビジネスメールが放置されるのかよ。
とか、
あっちのミスなのに、どういう論理構造で24時間以内に連絡がないと一方的に通知を破棄できるんだ?
とか、不審な要素がたくさんありますでしょう?
たぶん担当職員がメールを放置していて、へんな口実をでっち上げてウヤムヤにしようとしているのでしょうけど、こういう不誠実さにはムカムカするのです。

こういう確信犯的なウソ・不誠実・ハッタリがないあたり、わたしゃイタリアの方がずっと好きですじゃ。
「おっさん、いいかげんやねぇ」などといいながらも、基本的なところでは共感が維持できるというか、どこか可愛げのある国民性なんですじゃ。
Posted by 毛布 at 2005年11月03日 02:39
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。